ビジョイ氏の実験と検証
インドの建築集団 スタジオ・ムンバイとの出会いから4年。主宰ビジョイ・ジェイン氏指揮のもと、 尾道 山の手にあるアパートメントをたくさんの人の手でリノベーションし、人々が行き交う、 宿泊施設を備えた多目的な空間、〈LOG 〜Lantern Onomichi Garden〜〉としてオープンする準備を進めています。
ビジョイ・ジェイン氏はその土地の歴史・文化を読み取り、その土地の身近な素材を使ったり、 職人の伝統的な技術や手仕事を活かしたりし、創意工夫を凝らした建築手法を取っています。素材と向き合い、 プラクシス〈実験・検証〉を繰り返し完成する建物からは力強さと繊細さが両立し、清々しさを感じます。
ビジョイ氏にとって日本で初めての建築となる本プロジェクトでは、日本の建築でよく使われるい草や和紙、 竹などの素材を使って家具や内装の実験や検証を繰り返し、素材の可能性を探ってきました。
そこで選ばれた素材は手漉きの和紙。背景には和紙職人 ハタノワタル氏との出会いがありました。
ハタノワタル氏の和紙の魅力を体験
京都・綾部を拠点に活動する和紙職人、ハタノワタル氏は、綾部地方に伝わる「黒谷和紙」を自ら漉くことだけにとどまらず、 暮らしの道具やオブジェ、絵などのアート作品をはじめ、家具・内装の施工など幅広く手掛けておられます。 革のようにも金属のようにも見える独特な質感や色合いは、「古風・水に弱いのではないか」という和紙のイメージを覆します。
窓からの景色とリフレクトする部屋づくり
LOG3階の客室は、ハタノ氏により床や壁、天井が和紙貼りされ、繭の中に包まれたような暖かくも静謐な空間を作り上げていきます。
建築スタディの舞台となる場所はそのうちのひとつ〈308〉。「木々が生い茂る南側に位置し、木漏れ日が降り注ぐこの部屋で、 柔らかな光をリフレクトするような部屋づくりをするにはどうしたらよいか。」
そこで選んだ手法が「ちぎり貼り」でした。ランダムなサイズにちぎった和紙を少しずつ重ねながら貼り合わせます。
ハタノ氏曰く、「四角い和紙を真っ直ぐ綺麗に貼るのはなかなか難しいがちぎり貼りなら誰でも挑戦しやすい」と。 ビジョイ氏の「建築やプロジェクトに興味のある人なら誰にでも参加してほしい。開かれたものであって欲しい」 という考えにまさにピッタリなものでした。
建築を通して「暮らす」を学ぶ2日間
今回のプラクシスツアーでは、ハタノ氏より直接和紙の特性や貼り方の技術を学び、和紙貼りを実践します。 和紙がすでに貼ってある部屋を見てその風合いを感じとっていただいた後、直々にレクチャーを受け、 ハタノ氏とスタッフ、参加者の皆さんで和紙貼りの作業をします。
初日のお昼は隣接する施設〈せとうち 湊のやど〉でLOGオリジナルの昼食をご用意いたします。 一足お先に「アイデアのかけら」をお愉しみください。夜ご飯は地元の食材・お酒が揃った居酒屋にて懇親会を開催いたします。 開業準備室のスタッフから、ビジョイ氏と取り組んできた経過の小ネタが聞けるチャンスです。 2日目の和紙貼り体験は午前中のみとなりますが、LOGで朝食としてお出しするマフィンをブランチとして食べていただきます。
また、最後にはプロジェクトの秘話も挟みながらの“LOG 建築ツアー”を実施いたします。お楽しみに。 機械ですればなんでも早くて便利な時代に、あえて手間をかけることで暮らしの豊かさを学ぶ。 それは身の回りのものを自分の手で確かめることで暮らしを実感するからなのかもしれません。
このワークショップは建築家、職人、建築が好きな方、ビジョイ氏の考えに共感する方、プロジェクトに興味のある方、 尾道が好きな方、DIYをしたい方…どんな方でも参加していただけます。一緒に学びながらLOGを創りあげていきましょう!